反転

備考

電車で40分ほどのナチュラルユートピア(藤井風の1st アルバムレビュー)

電車で40分ほどというのは、私の地元尾道からJRで藤井風君の地元、里庄へ行くのにかかる時間である。ちなみに中間地は福山で、尾道または里庄からJRで20分ほど。

このブログをお読みになっている人はなんとなく都心に住んでいる人が多い気がするので距離感が掴めないかもしれませんが、JR山陽本線は基本的に快速電車というものがありません。福山から岡山までの移動時間を気持~ちだけ早く乗車できる快速サンライナーというものがあるけど、快速というほど快適に機能した覚えすらありませんw普通列車で移動するのがスタンダードです。なおかつ駅間も4分あるのがデフォ。

里庄駅の一つ前の駅が笠岡で、広島県に最も近い岡山県の市の一つで、カブトガニの街でもある。二つ先の駅は金光教の本山があります。ちなみに里庄が位置するのは浅口郡。本当に自然が豊か、としか言いようのない土地です。

福山といえば、Perfumeののっち、Official髭男dismの楢崎さん(二人とも陸上部の強い学校出身)、宝塚スターの暁千星さん(出身中学高校同じ!)

けんたろうお兄さんって言ったあなたはするどい

尾道因島といえば、ポルノグラフィティのお二方(御三方と言いたい気もするけれど現在は)がいる。(あなたもいるって言ってくれた方は、ありがとう^o^)

ところ変わって岡山といえば、と言われると、津山市のB'z稲葉浩志さん、岡山市甲本ヒロト御師スチャダラパーBOSEさん、そしてさとうもかちゃんくらいか。だからなおさら、地元民には藤井風君の存在はインパクトが余計に強いのだ。

 

私はすごいスピードで藤井風君の創る音楽に魅せられ、喜びを覚えています。

 

知ったきっかけは、俺たちの神の一人、aikoの妙なレコメンドでした。

https://twitter.com/aiko_dochibi/status/1248370771438657536?s=20

さて、どうしたものか、と思い、数か月様子を見ることにしたところ、信頼しているaiko楽曲ファンの一人である第三のロースさん(3rdroさん)が、きちんと感想を述べている上にどはまりしていることを確認したので、

 ようやく腰を上げて聞いてみました。最初は冷やかしのつもりだったのに…

(風君の顔は、正直、若かりし父親の顔に少し似ている…濃さが…。髪が長かった時代もあったから参照しやすい…)

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しばらくSpotifyでHELP EVER HURT NEVERを聞いていたのですが、アナログ盤が出るとのことで、せっかくなら解像度が高い状態で解析したい!と思い予約して数か月後、こうして家に届いたのであります。

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開いたら風君の顔ばっかりでまじかー(笑)ってなりました。特大ポスターまでついている。(それはいいから歌詞カードつけてくれ)

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ちなみに、180g重量版クリアヴァイナル、特典のソノシートまでMade in E.U. 。噂のチェコプレスというやつでしょうか!

実際針を落とすと、ここまで解像度を上げて聞かせてくれる仕様だったのか!?と感動してしまいました。

スタジオの空気の音まできっちり聞こえるのです。これがユニバーサルミュージックのデフォなのでしょうか?それともチェコプレスの真価というものか?どちらにしても大きい恩恵であります。

6600円もするけれどこれはそれだけ払ってでも聴くべき音。(東洋●成大変だろうけれどレコードなので聞ける音域とその感覚を上げていけたらいいですよね…)

というわけでこうしてレビューに書く始末になりました。さて始めるよ!前置きが長い!反省!

 

Disc1のA

1. 何なんw

はじめタイトルを見たときにどうしようかと思った。草生やしてるしwここまでするめソングになるとは思わなかった。「なんなぁ(ha)ん!」は毎日言ってますw

まず、イントロ1つだけでここまで構成があるの!?そして少し長いだけでここまで潤沢になるの!?と驚いたものです。「はれ~ばれ~はれ~~ぇ~え~え~ぃえぃえ~⤴」のスキャットはきっとあれですよね!岡山がハレの国だからですよね!と解釈しています。解釈は自由だからね。

で、この曲はaikoが好きな人は絶対に絶対にワンパンノックアウトですね。とにかくおもちゃ王国ならぬスキャット王国。ウタウイヌが好きなら藤井風も好きでしょ!

で、分身の術をマスターした風君の藤井ゾーン(テニスの王子様手塚ゾーン風)発揮でもあります。ハロプロにおけるつんく♂コーラスなんてまだぬるい。というか藤井風君の声しかないのがまたすごい。どういうこと。

ブルーズ(半音を一音にうまくねじこむ歌い方)の嵐、

ヤヴァメッヤヴァメッヤヴァメッヤヴァメッのラップでもブルーズ、

ヴ〜ルァギルィーノブルゥスヴ〜〜バラベレーンベベレベレンベベレンババラーンバそれは\何なーんw/

先がけてワシはヒュ~ゥたが!(藤原基央のよくもまぁがヨーンコマハァアンになる感じ from Title Of Mine)(aikoの"い"が"き"になる感じ)

とか。

特に、ヴ〜ルァギルィーノブルゥスヴ〜〜バラベレーンベベレベレンベベレンババラーンバそれは\何なーんw/は、個人的に一番備後弁を感じますね。aikoでいうとロージーですわ。

広島弁って独特のドスが聞いていて、岡山弁はコミカルな感じなのですが、備後弁はそれぞれの癖を取り上げて混ぜとる感じ。で、日常的に使ってるからなお馴染んどるんよね。うらやましい…(普段備後弁が出ない人)

何よーるかわからんって人はとりあえず聞いて!

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この曲のスマートなところは、何なんwでねちっこく連呼せずに、アウトロの風君の電子ピアノがすっきりと軽やかに表れて全体のバランスがとれとるところ。

また、サウンドのミキシングでビートを創る音とハモンドの音が大きめになってはおるけど、彼が弾き語りしているような跡(電子ピアノかな)もしっかり残しとるし、こんな音楽の豊潤さがCDに収まるとしたら、十数年前のソニーSACDくらいじゃろwだから、LPで買うのが絶対に正解。というか45回転片面12インチシングル作るくらいでも十分需要があったんじゃないんかね~。

で、個人的には一生懸命聞いてもBメロの”肥溜めへとダイブ”は絶対に聞き取れないし思いつかない。ダイブーウォォって出の悪い水道どころの問題じゃにゃーわw

 

2.もうええわ

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カセットのデモテープで録音したような電子ピアノ音の演奏で始まるのがニクいのと、後々その音が2番導入でサンプリングとして再利用されるというニクさにニクさを重ね100点満点の一曲。サンプリングが使われる要素といえばヒップホップですが、こんな使い方もっと早くからできたらどんなに音楽は発展を遂げただろうか!なんて思う。

あと、スネア音の倍音なのか?人の声の「プシッ」って音なのか、サンプリングなのか、おそらくビートも生ドラムとサンプリング音の寄せ集めなのだと思うのだけど、メロウなギターも相まってすごく気持ちいい。

そこに重なるようなエレピのフレーズは風君が弾いているのだろうか。

サビに向かう前の風に吹かれて~のメロがきっちりEの長音階素直なスケール(ファ#ソ#ラシド#レ#ミ)を持ってきた後にももえぇわ~がミファ#ソ(ナチュラル)ミレ(ナチュラル)~になっているのも、アイデアが天から降ってきたとしか言いようのない展開で感心。でアウトロもフェードアウトで大正解。

簡素さで言ったらたぶん優しさよりこっちのほうが売れセンな気がするけれど、タイトルがこんなんなので、ネタに走りすぎないためにも引っ込めたのが伺える気がします。

で、私が長岡亮介さんだったら「してやられた~!ペトロールズでもできない!」と思う。なぜなら藤井風君の武器はピアノだから。理論を気楽に無視できるのはピアノ作曲の強みだと思います。ドはドの音だから。

Disc1のB

3. 優しさ

恐らく、この曲を作ろうと思ったときに、コードの実験をたくさん重ねて、敢えてジグザグな進行にしようと心掛けたんじゃないかと思うくらい、一筋縄にはいかないサビメロ「今何を見ていた あなたの夢を見た」への道のりがあったのではないかと、イントロから匂わせており、いい。発売予定のピアノスコアも気になるところ。

これこそ生きとし生けるものに共通する生き方の有様だし、それぞれの写し鏡の結晶。

なぜかBOSEのスピーカーを使っているスーパーマーケットに行くと有線で流れていたを覚えているのだけど、それでも解像度が低いし、曲自体の展開も多くて、よく日本のチャートに入れるための曲(売れセン曲)にしたなぁ…と思ってしまった曲。サビが覚えやすいからいいのかもしれないけれど。

で、先ほども

”理論を気楽に無視できるのはピアノ作曲の強みだと思います。ドはドの音だから。”

ということを申したのはここでも通用する気がします。

Aメロのコード進行は変ロ長調、Bメロはト長調、サビは嬰ハ長調

それぞれのカデンツァ(一度→属七→五度(次の調一度))の五度(次の調一度)で高い音を主軸にして一番低い音を半音上げ下げさせた上でその音が入ったそのスケールの二度っぽい和音(コード)を使うという手法…

って言って伝わるか…?ヤマハジュニア専門コースの知識役に立ってるのか…?

自分でも何言ってるのかわかんなくなりかけていますが、説明しよう、はーっ…。

サビのスケール嬰ハ長調(C#)の五度がG#で、それを半音下げたらGで、そのGをその音を使って作れる次の展開における二度っぽい和音(ソドミ♭(Dm)みたいな)でAメロに入る。

Aメロのスケール変ロ長調(B♭)の五度がFで、そのFを半音下げるとE(ミ)で、そのE(ミ)を使って作れる次の展開における二度っぽい和音(ミラド(A)みたいな)でBメロに入る。

Bメロのスケールト長調(G)の五度がDで、その半音を上げるとD#(レ#)で、そのD#(レ#)を使って作れる次の展開における二度っぽい和音(レ#ファ#ラ#(D#)みたいな)でサビに入る。

的な。

もっとスマートな説明ができたらえーんじゃけど、それを説明するには鍵盤使うしかないし、なによりギターに比べてもピアノは感覚で弾くものだと思っとるのでむずいwわ!

そんな曲がただでさえまがまがしいJ-POPの中に入ってるかと思うと相当やばいぶっこみだなぁと思わずにはいられないのです。

 

4.キリがないから

米津玄師や星野源が好きな方はひっかかりそうな音な気がする。メロディーのペンタトニック感と、サウンドのハイコンテクスト。しかしながら、この曲で特筆すべきなのは、POPS色を出すなら、サビで敢えてBm7を使うところを、素直にメジャーのB(B7?)を使っているところ。これぞ常に前を向く藤井風サウンドですよ。

で、これさぁ、、

日本テレビでやってたなっち(安倍なつみ)主演のドラマ、仔犬のワルツを思い出しましたね…。確か第二話がピアノの絶対音階のテストで、絶妙な調律音を言い当てるっていうのだったと思うのですが…まじでそれ。震えました。

 

5. 罪のかおり

笑っちゃうくらい風君が一線おいて作ったんじゃないかっていう雰囲気が伝わってくる上に、結局罪のかおりから逃げ切ってるので、めちゃストロング成敗大勝利!

なおかつ全然ねばっこくない曲。

”気づいた時にはまだ早い”って本当にポジティブだし、日本人がここ何十年かで背負ってしまったネガティブさを全部とりはらうようなヘルシーさもある。

ライブでビッグバンドで聞いたら絶対に楽しいし、水戸黄門暴れん坊将軍のような、退治!終了!のような潔さが感じられる。

妖艶さ?も感じるって?

たぶんあなたがエッチな何かや欲望を駆り立てられるようなものを摂取しすぎなんでしょ?それでお金も結構取られてるんでしょう?シッテル!(^^)アキレチャウ!みたいな。そんな主旨だと私は思います。

これは椎名林檎先生や斎藤ネコ先生などの界隈も手が上がりません!参りました!ってなりますね~。

 

Disc2のC

6. 調子乗っちゃって

ウッドベースとウィスパーおよびウィスパーボイスがスパイスで色気を引き立たせている。尚且つこのポジティブな流れを断ち切りそうなほど、後悔しているような曲。

で、個人的にそこまでピンとこなかった…。

確かに、急にダダダダと降りるピアノの和音が印象に残ったりもするのだけど。最後の方転調したりしているし、え、マジで?と思いました。

ただ、万が一、藤井風君なりのJ-POPのイメージをそのまま表現しているとしたら、現代に向けた皮肉の一曲になるのかしら。

7.特にない

Aメロ(ほぼサビ)とBメロのシンプル構成の曲。憶測でしかないけれど、気楽に手癖だけで作ってみたというのが伝わってくるような気がします。結構好き。

メロディのブルーズ(ブルーノート)とはどういうことかを音で示すと、

特にない 

ラ♯シーラーミーファ♯ソファ♯~~~

望みなどない わたし

ファ♯ソソ♯ラーファ♯ーレーミファミーレードーシー

期待せずに 歩く

ドソーファ#ソラ ミファミ~レ♯レ~シラ♯シ~~

って感じなのですが、ピアノの楽譜で言うと、装飾音符に近いのかな~。私はピロピロしたこぶしって呼んでいます。(頼りない名前である)

aiko畑で育った人間にとってはもはや当たり前の存在になっているので、改めて説明するのも難しいですね…。

シンプルな曲だからこそこのブルーズが際立ち、特に風君の曲はそれを堪能しやすいのもいいところ。

で、不思議とトラックにNujabesのような雰囲気がある。風君のピアノのフレーズもビートに合わせるように弾いているような。Yaffleさんのもくろみというものなのか、はたまた作曲の時にビートボックスをかけながら作っていたんだろうか。

そして、歌詞検索だとわたししか出てこないのだけど、後半のほうは敢えて「あたし」と歌っているのが結構キーな気がしています。"わたし"よりも"あたし"の方が我が強くていじっぱりな気がしませんか?

なので、表面あたしと内面のわたしの曲なのかな、と考えました。

数々のこの曲のレビューを見ると老子とかいろいろ思想の方が色濃く出ているのですが、特にないってタイトルをつけているくらいだし、そこまで考えていないんじゃないかな…。

 
8.死ぬのがいいわ

真っ先に自分の頭に浮かんだのは太宰治の女でしたね。(ヲタク特有の早口クソでか声)

メロディのペンタトニック(わかりやすいのは沖縄の民謡がそれ)は絶対メランコリックな昔話を意識しないと出てこないという自論があります。平安時代の貴族だって雅と言いながらいろいろあったからこそのたまもので。(笑)

で、絶妙に韻を踏んでいるところがアメリカのPOPS感ありますよね。関西の音楽家がやる傾向にもある気がするけれど、大元をたどればおそらくアメリカ。

で、Bメロのソ♯ソ♯ソ♯ソ♯ファ♯ファ♯ファ♯ファ♯ミミミミド♯~シ~のメロディフレーズは最近のPOPSに本当によく入ってる。業務用BGMをスーパーで聞いてメロディしょぼっ!ってなるやつ。なんだけど、藤井風君の場合はメランコリックペンタトニックともバランスよく使う上にブルーズが入っているおかげでのっぺりとしないんですよね。

 

9.風よ

これは風君なりのアメージンググレイス、演歌な気がするなぁ。ピアノの弾き語りで収録されたら全員ボロボロになるので、バンド編成になっていてよかったと思いました。気を抜くと私でも泣いてしまう曲。最後のはぁぁぁぁぁぁぁ~~~は本当に演歌歌手。この曲に関しては、調子乗っちゃってとは違って、どう言葉にしていいかわからないくらい名作なので、テキストで書けないっていう。まず聞いてください…。

 
10. さよならべいべ

この曲は何なんw並みに風君がうるせえwwww

ギターロックアレンジのおかげで、ギターがうるさいように聞こえるのかもしれない!のだけど、圧倒的にうるさいのは風君の声です!!!!!(めちゃくちゃ笑いながら褒めています)

うるさい藤井風君なりのわらべ歌。語尾のあ音がとても印象に残ります。

特に愛のことッヴぁ~~~~

わしかてずーぅといーぃしょにっおりたかったッわあぁあ~~ハハハァンハ~

ピロピロこぶしどころか装飾の多いガチャベルト的な!

しかし、これぐらいのテンションで色々な別れの際にはアンセムにしていたいですね。風君なりのポジティブバイバイ取扱い説明書。

広義の京都音楽やスピッツが好きな人は絶対にハマる音楽。

 
11. 帰ろう

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人間の現世における死ぬ間際、あるいは死生観を想定するような曲。

最近自分が古事記を読む機会があり、それが日本の土地誕生神話にとどまらず、宇宙の太陽系惑星のはじまりにまつわる神話だったことを知って、えらく感銘を受けていたのですが、世界観がそれに近い。(伝わらない)

自分の周りで自ら現世を去る人間がこの15年余りにも多かったので、いろいろと考えることがあったのだけど、住む世界を変えただけ、現世でたりうるいのちではなかったという話なんだよな、と思えることや、そう結論付ける人が周りに多くいることをありがたく思います。

で、風君の帰ろうは、パッヘルベルのカノンを思い浮かべてしまって。でもそのまんまだった。次のステージ行く際にかける曲という意味では、藤井風の帰ろうは、パッヘルベルのカノンと同じ。

22,3でこんな曲をかけるのは本当にすごいし、実際本人もパドルの上で瞑想するなんてことを始めているようなので、人一倍、自然と共に、あるいは和をなして生きていくということに意識を置いて生活してるのだなぁと感じる。

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曲自体はハウスのクリームシチューで使えそうなクオリティだなぁと思ったが、実際藤井風君は料理の腕前はさておいて、バターと小麦粉と牛乳で一からホワイトソースを作るくらいのポテンシャルを持っていそうなんだよなぁ。(笑)

 

 

おまけ
何なんw(TV ver.)

特典のソノシートに入っていたのがこれですが、いわゆるインスト版でした。

で、試しに歌ってみたけれど、全然覚えられないから歌えないwwwwww

なんなら歌詞カードがないから歌詞すら頑張ってもサビくらいしか出てこない…!

罪なおまけでした。そしてコーラスがうるせえ(褒めています)

 

というわけで書き終わった~!8000字くらいだそうです。つかれた~。

武道館配信が楽しみです。